My Favorite Movies.22
少し前ですが先日、話題の映画を観に行ってまいりました。
奇跡のリンゴ
絶対不可能と言われていた、無農薬でのリンゴ栽培にすべて賭けた実話の物語です。
数年前に知人から、この無農薬リンゴを作った木村秋則氏の話を聞いたことがありまして、そのお話がまさか映画になるとは。
そういうわけで、期待して映画館へ足を運んだわけです。
で、鑑賞しての感想ですがね。
娯楽映画として観るのなら、感動の物語かと。
実際日本での宣伝も、「感動した」、「泣けた」、など、そんなうたい文句で興味を引き付けているような感じ。
それはそれでいいです。映画は基本的に娯楽として楽しむものですから。
それに、確かにすばらしいお話ではあります。実話として観ても、木村秋則氏という人物の非凡さを語るに充分な内容だと思います。
が、
個人的には、「そもそもこの話って今映画化しなきゃいけなかったわけ?」
って基本的なところから疑問がわいてくるわけで。
例えばですよ、昨年iPS細胞を研究してノーベル賞を受賞した山中教授。
彼の業績を今すぐ映画化したところで、一般人には「なんのこっちゃ?」で終わると思うんですよ。
なぜならそれを生み出した努力と功績は確かに世界的にすばらしい。
でも、一般人の中のどれだけの人がiPS細胞の恩恵に浴してます?
未だ一人の患者の命も救っていない。
つまり、現在当たり前のように人間の生活に浸透しているモノの先駆者ではまだないと言う事。
この無農薬リンゴもそう。
無農薬でリンゴを作り上げたことは確かに奇跡。木村氏の努力と功績は世界的に素晴らしい。
でもこの奇跡のリンゴは、いまだもってまだ「奇跡」なんです。
無農薬リンゴを生産するメリットが農薬を使うより高いと結論づいていないから、ほかのリンゴ農家はまだ農薬を使ってリンゴを作ってる。
そのほうが手間、コスト、どれをとっても効率がいいから。
無農薬リンゴが普及して、少なくともリンゴだけでも無農薬栽培が「常識」にならなければ、奇跡は奇跡で終わってしまい、結果この映画の持つ意義なんて、ただの「感動娯楽大作」だけでしかない。
わたしゃそう思えるんですがね。
あとそれと、その主役の木村秋則氏を演じる阿部サダヲなのですが、ワタシはこの役者さん好きですよ、誤解してほしくないですけど。
でも、ただでさえキャラの濃い俳優さんですから、ちょっとこの映画には合わなかったんじゃないかな?って。
なんて言うかね、主演=阿部サダヲですが、主役まで阿部サダヲになっちゃってる。そこに木村秋則がいない。
脇を固めている菅野美穂、山崎努、伊武雅刀などがうまく中和してくれていますが、阿部サダヲさんちょっとキャラ立ちすぎだよ・・・
そのおかげで菅野美穂の俳優としての魅力をワタクシ的に発見できましたけど。
いやー、いい女優さんです。すげー上手い。
いや、嫌いじゃないですよ、この映画。
むしろ充分楽しめました。
でも、実話の物語として題材とするには時期尚早。「感動の大作」的な商業主義めいたプロモーション、なんだか一歩引いた立場からこの映画観ると、すげー作為的な香りがするんだよなぁ・・・
ちょっと残念。