My Favorite Movies.26
本日、雨が降っております。
丁度良かった。入院前から観に行きたかった映画、やっと観に行くことが出来ました。
というわけで、今回ご紹介する映画ですけどね。
繕い裁つ人
映画「しあわせのパン」を制作した三島有紀子監督の作品です。
「しあわせのパン」の、あの世界観は私も結構好きでしたので、観に行くまでとても楽しみにしてました。
ただ今回はオリジナルの脚本ではなく、原作コミックの映画化らしいのですがね。
まぁボク読んでないんで原作と同じとか違うとか、そんな先入観なしであくまで映画としてのストーリーしか解りませんが。
神戸にあるオーダーメイド洋裁店の二代目、南市江(中谷美紀)のもとには先代からの顔見知りのお客さんが仕立て直しなどで集い、市江もその仕事や先代がデザインした洋服のリファインなどで満足していた。そんな南洋裁店の服のブランド化を薦めるデパートの営業・藤井(三浦貴大)に対して、「着る人の顔の見えない服など作れない。」と、全く聞く耳を持たない。
「南洋裁店の服は世界で一着だけの一生もの。」
その信念とともに生きる市江だが、藤井と出会い、仕事を進めていくうちに封印していた想いが少しずつ彼女の心を動かしていく。
三島監督らしい、一つの仕事に人生をかけて生きる人たちの日常の中のドラマを独特の感覚で表現するこの世界観は期待通り。
そしてそういった人たちが作り上げる作品にはそれを手にした人が一生をかけて愛する事の出来る価値があると言う事も監督はよくわかってらっしゃる。
この映画は洋服がテーマですが、服だけじゃない。時計とか、バッグとか、万年筆とか、自転車のフレームとか(笑)、大量生産大量消費が当たり前のこの時代でも、一生ものと呼ばれる作品というのは素材をただ形にするのではなく、素材に命を吹き込む事ができる「職人」と呼ばれる人たちもどこかに必ずいるし、その吹き込まれた命に自分の分身を感じながら一生大事にそれを使う人もいる。
考えてみればこれほど贅沢なことって他に無いんだな。
もちろん大量生産大量消費が現在の先進国の経済を支えてきた事は間違いないと思います。
でもそうやって作られたものって、確かに「使う人の思い」なんて考えられてるわけなんかないし、使う側だって最大公約数的に計算されたデザインの普及品に思い入れなんて感じることもない。
だからこそ、どんなものでもいいから何か一つくらいは自分が一生大事にできるような「自分だけの為に作られたもの」を手に入れたいと思うし、本当の豊かな生活ってそういうものじゃないかな、って思うわけです。
ましてや市江のように、使う人の顔が見えるモノ作りとか、オーナーに一生使っていただけるものを作れる誇りを感じられる人生なんて大多数の人にとっては幻想であり、お伽噺であり、ある意味茶番ですらあるかもしれない。
でも理想であり、憧れであり、だからこそそれを生業とする本物の職人には誇りを感じるのではないかと思うわけです。
まぁとにかく、そんな「一生もの」の持つ素晴らしさとか、そういったものを感じることができるいい映画です。
これ観た後、自分にとっての一生ものを何か見つけてみたくなるかもしれませんよ。
何もそれがルイ・ヴィトンじゃなくても、ロレックスじゃなくても、パーカーじゃなくても、デローザじゃなくてもいいんです。
有名ブランドでなくとも自分が手に取って、心を通わせることが出来ると思ったもの、そこには間違いなく職人さんの真心が込められているはずですから。